西表の環境問題

2010年10月11日更新
追記2012年12月20日 Ver.8
2017.2.1.追記
 

概要

西表島は自然環境に恵まれていながら、多くの環境問題を抱えています。
地球規模での環境破壊が進行している中では、西表島も、無関係では居られないし、
西表の環境問題は日本の環境行政の縮図といえます。
環境に関する法的整備も、不統一、不整合、時代遅れで、
基本原則が存在しないことは、「野鳥8月号」(06年日本野鳥の会)にもある通りです。
諫早、辺野古、泡瀬などの例を挙げるまでもなく、周知の事実です。
また、環境省職員に逮捕権や捜査権はなく、折角作った法律も殆ど役に立っていません。
赤土でどんなに汚しても、営業停止や逮捕者は出ません。(2、赤土汚染)縦割り行政の矛盾や、
責任の転嫁、環境対策予算の少なさは、言い出したら、枚挙の暇もありません。
そもそも、離島の暮らしは厳しく、収入に繋がりません。
そのため、竹富町や旧島民の多くは、ともすれば開発や地域振興への方向性が、強くなります。
そして、竹富町の取り組みが消極的なことを理由に、環境省や沖縄県は、環境対策を蔑ろにして、
申し訳程度の対策しか実行していません。
日本には、学術調査のプロは居ても、保護のプロは居ないと言っても過言ではありません。
その証拠に、保護のために、海外に留学する人が殆どです。
しかし、欧米の保護も、人間本意で経済重視の保護活動であることが多く、
自然の権利訴訟に見られるような、野生生物の生存権や居住権を念頭に置いたものではありません。
保護を始める前の調査はあっても、保護の予算は箱物でストップして、肝心の保護には到達せず、
実績が上がらなかったりします。
科学的な調査も調査期間や規模で、十分に実態をつかめない場合もあります。
途上国並みの産業振興優先と環境対策の遅れが目立ちます。
自分さえ良ければ、今さえ良ければ、違法でなければ、バレナケレバ、捕まらなければ、
という御時世の中では、環境対策などの儲からないことに興味を示さない人が多過ぎます。

自然環境は4次元で変動しています。対応が後手後手になるのも当然ですが。
温暖化による台風の大型化や襲来数の多さにより西表の自然環境は大きく破壊されています。
イリオモテヤマネコを初めカンムリワシ、アカショウビン、ウミガメ類と例外がない位です。
西表以外でも野鳥の減少に歯止めがかからない状態です。


えびさんちの生態学へリンク

1, イリオモテヤマネコの保護
  イリオモテヤマネコは絶滅する!!
 2010年最悪のペースで交通事故発生!!
 ヤマネコは減少傾向なのに事故は増える
 10月現在交通事故死亡ヤマネコ5頭事故6件

捕獲されたイリオモテヤマネコ
テレメトリー調査のために捕獲されたイリオモテヤマネコ


西表で最も大きな環境問題はイリオモテヤマネコの保護が進まない事です。
推定100頭といわれて20年程になりますが、100頭という数自体が、危機的な数なのに
全く保護の道筋が見えてきません。環境省や沖縄県は、竹富町の取り組みがないことを理由に
見て見ぬふりを決め込んでいます。
2007年1月の新聞報道に依れば、イリオモテヤマネコの目撃数が大幅に減少し、1997年の121件に比べ、
2005年で41件、2006年で54件と、1/2から1/3に減少していることが報道されましたが、
これほどの減少でもまるで危機感が感じられません。!!

動物の種の維持には200頭から300頭が必要不可欠といわれています。
個体数が少ないとトキのように近親交雑により絶滅への道をたどります。
飼育下で交配が完全にコントロールできたとしても100頭は最低の数と考えられます。
しかし、肉食獣であり、限られた島での物理的要因や台風常襲地帯では、
種の維持に500頭程の個体数が必要だと考えます。しかし、行政は動きません。
日本は環境対策に関しては、全くの後進国で、中国にも劣ります。
山猫だけの問題ではありませんが、環境問題の象徴としての山猫の保護が遅々として進まない事がよい例です。
山猫の保護には大きく分けて、開発、感染症、交通事故、自然の生態系の疲弊が上げられます。
大規模な土地改良などは、行われていませんが、大型リゾート、県道の改修や、土地改良などの
中、小規模の開発は増加傾向にあり、個人的な小規模な開発も後を絶ちません。
それら全てが、山猫の生息圏の減少につながり、生息域の分断化を引き起こしています。
数年前、野良猫に猫エイズの感染が確認されましたが、その後何故か調査は行われず、
2005年やっと東部地区で駆除が始まりましたが、既に野良猫の大半(500頭以上)は
分散した後で、山猫に感染している可能性もあります。
また、2ヶ年度の捕獲は、集落近くで実施されていて、集落より離れた場所に分散した野良猫には、
手が付けられていませんし、集落付近の野良猫も総数で200頭程度は残っていると思われます。
幸いな事に、自然界での野良猫の繁殖は確認されず、人家からの供給が止まれば、
野良猫は減少しそうな事ですが、島への動物の持ち込みを規制し、病原菌などの持ち込の防止を図る必要があります。

県道の改修工事が進み、自動車は高速運転が可能になり、2001年には年間5頭もの死亡事故がありました。
その後死亡事故は減りましたが、その原因は県道沿いの山猫が減少したに過ぎないのが現状です。
近年、県道の改修工事や土地改良が行われた場所での山猫の餌動物が急激に減少しています。
勿論、島全体でも減少傾向にあり、セマルハコガメ、キシノウエトカゲ、シロハラクイナやカエル類の減少は顕著です。
旧島民の方達からは、以前は標高の高い所にも山猫の痕跡があったとの情報もあり、
西表島全体の生態系が疲弊していると考えられます。
目撃数が、これほど減少していることから、生息数は現時点で、実質80頭前後まで、減少していることが予想されます

環境省イリオモテヤマネコ第4次生息調査発表
08年8月7日付け
環境省によれば推定個体数100〜109頭とし、
前回の92年〜93年の3次調査結果を修正し108〜118頭とし、
減少傾向にある事を初めて認めた。
その原因を交通事故死や生息域の減少と、観光による環境の攪乱も懸念される、としている。
交通事故対策のアンダーパス(地下道)は有効とした。
しかし、アンダーパス(86個設置)は年間10個ほど増加しているが、
交通事故死はむしろ、増加傾向にあり、科学的な知見とは言い難い。
このことは、野生状態でのイリオモテヤマネコの絶滅の
カウントダウンが始まった事を意味し、
最短で10年最長でも50年後には野生状態での絶滅を、
示唆するものである。
特に雌猫の減少と近親交雑が進行していることが大きな問題です。

2008年8月14日

今年も大型台風が2個も接近し海岸林には枯死する樹木が多く見られ、
部分的には全滅に近い状態の所もあり、今後ヤマネコに大きな影響がでることが予想される。
10月20日
 

2,赤土汚染
  仲間川の赤土汚染
           仲間川河口

  畑からの赤土流出 赤土流出
     畑からの赤土流出      少しの雨でも水路から溢れ出す汚染水
 
平坦化工事現場から流れ出る赤土     沈砂池は直ぐに満杯になり汚染は広がる
沈殿池の増設のない平坦化では、小雨の時しか効果が無く、大雨の場合は流出量は増える可能性さえある。
殆ど予算消化だけの環境対策といえる。



 平坦化工事で僅か40oの雨で氾濫する水兼道路
 手前は側溝のない農道
 完全な設計ミス

西表で、規模的に最も大きい環境問題が、赤土汚染です。
西表の海は赤土汚染により珊瑚礁は死滅し、そのせいで海岸浸食が激しくなっています
西表の赤土汚染の原因は、主にサトウキビ栽培によるものですが、パインアップル栽培でも傾斜地に
除草剤を散布し、土砂の流失を起こしています。
サトウキビの栽培では、作付け前のスキによる天地返しに始まり、整地、植え付け、中耕、畝立てと、
最低でも5回もの耕起を行い、何時雨が降っても赤土流出が起きる状況が、半年近くあります。
さらに、作型が長い場合でも1年半で改植になり、畑の3分の1は赤土が流失可能な状態あるといえます。
しかも、反収(面積当たりの収入)が低いために、1農家当たり3ヘクタール以上の栽培面積が必要で、
広大な耕地面積が必要です(大量の農薬や化学肥料も使用されています)。
最悪な事には、多額の補助金によりこの赤土汚染が成り立っている事です。
新たな土地改良でも、対策は不十分で、沈殿池の狭さが汚染を増加させています。
しかも、製糖工場には浄化槽がなく、大原川は操業期間(1月から4月)はヘドロ化し
赤土汚染との重複汚染を起こしています。
沖縄県は、耕地の傾斜是正や沈殿池の整備を始めていますが、焼け石に水の状態です。
沖縄は台風常襲地帯で、他の作物は安定的な生産が難しい事はありますが、
無農薬栽培や、もっと沈殿池を増やすなどの、徹底した環境対策をし、赤土汚染を防止するか、
より赤土流失の少ない、作物への転換を図るべきです。
例えば、防風帯を縦横に配置し永年作物へ転換し、沈殿池の水を潅水に利用すれば、
一石二鳥の方法なのですが。


 
3,開発
開発工事
  雨でも工事が続く土地改良、左上方はこれからの工事区域


  2006年度の工事 農道が改修されないまま浮いた状態

  
工事現場から沈砂池に流れ込む赤土

西表で最も大きな開発は土地改良に伴う農地開発です。
最近は大きな土地改良はありませんが、環境アセスに引っ掛からない小規模な開発は、
毎年何処かで行われています。

エゴロード  カニ達の放卵の行進
     県道に立てられたエゴロードの看板        カニ達は放卵の時とっても迷惑な段差

無用の沈砂地 
工事区域から1滴の水も流れ込まない沈砂池
役に立たない「赤土流失防止条例」
沖縄県赤土防止条例へリンク
                                            
その次に大きな開発は、県道の改修工事です。
従来の道幅を倍にし、余り利用されない歩道や街路樹が植栽されています。
最近は、街路樹も減ってはいますが、道路の直線化で、開発面積は増える傾向にあります。
山猫対策に地下道なども、年間1億円程使われていますが、山猫の利用は余りありません。
折角できた県道も工事車両が爆走し、路面を悪化させていて、
誰のための何のための道路改修か?理解に苦しみます。
税金の無駄遣いそのものの「エコロード」はエゴロードでしかありません。
 
    通称ヒヨドリ坂の県道改修工事 3月             5月


ホテルニラカナイ
           台風後のホテル全景

リゾートホテル  
   ホテル前の海岸の浸食が激しい大型リゾートホテル
近年、西表で最大のリゾートホテルが建設されました。
住民の反対運動があり、排水の地下浸透や海亀の産卵地への光害、水道水の不足などが
問題視されましたが、ホテルは、住民の意見を無視したまま、営業を始めています。
本来、リゾートと手付かずの自然とは相反するもので、リゾート開発とは自然環境の破壊でしかありません。

2007年2月11日豊原公民館でリゾートホテル建設の説明会があり、最大の約19ヘクタールの
敷地面積の開発が予定されていることが判りました。
宿泊棟140棟、収容人員300名の予定とか。
開発面積から、規模の拡大の可能性が高いと思われます。
現場は隆起珊瑚礁の台地の上で農業開発の跡地で、二次林に覆われた場所で、カンムリワシや、
ヤシガニがよく見られる場所で、貴重な自然が回復しつつある場所です。

 
   
4,ゴミ処理
従来のゴミ捨て場風景

最終処分場の供用が始まりましたが、埋め立て方式のもので、計画では15年で満杯になりますが、
人口は増加傾向ですし、ゴミの量に関しても、本島のデーターを元にしているため、観光客の増加などで、
予定より早く満杯になることが予想されていますし、不必要な分別が、住民に強要されているのも問題があります。
また、プラスチックゴミも埋め立てられ、負の遺産として、永遠に残される予定ですし、今までに、
野焼きされた各集落のゴミ捨て場の燃えかすも残されます。
しかも、予算難や離島の不便さから、リサイクルも思うように進んでいないのが現状で、ゴミは増える傾向にあります。
家電ゴミの処理運賃が高く、殆どの家庭で備蓄されています(我が家でも)。

5,漂着ゴミ
漂着ゴミ2005
      海岸の漂着ゴミ

毎年、秋から冬の北風の強い日には北の海岸を中心に、大量のゴミが漂着します。
しかも、年々増加し、家電ゴミも増加しています。
外国からの、漂着ゴミのトップは韓国のもので、北風の影響を強く受けていることが分かります。
現在、国は対策を検討していますが、今のところ、法的には処理の道筋は全く着いていません。
国の対応の遅れには、呆れるばかりで、地方もこれに乗っかって、殆ど何もやらず、
民間のボランティア任せです。
家電リサイクル法の施行で、家電ゴミが増え、テレビ、冷蔵庫、蛍光灯の漂着が増えています。
テレビは、新品購入価格より、リサイクル費用や運賃の総額が高い場合もあり、自然の成り行きです。 


6,観光開発(緩やかな開発)
浦内川の遊覧船の波
      観光船による引き波
西表島の観光は、2大河川の仲間川、浦内川での動力船による遊覧が主体になり、
石垣からの日帰りツアーの観光客の殆どが、どちらかの観光船に乗船する状態にあり、
観光船の航行による、河床の撹乱が起こり、マングローブの根っこの露出や、
台風時の倒伏が問題になり、「仲間川保全利用協定」が締結されましたが、
観光業者のみでの締結で、殆どその機能を果たせていないのが現状です。
地域住民や専門家の参加できる、科学的な根拠による保全利用が必要で、
単なる一部区域での減速では問題解決の糸口にもなりません。
2012年大規模なマングローブ枯れが明らかになりました。
 
 googleでも分かる支流の倒木 支流沿いの1列は残っているが、奥は枯死や倒伏している。2012年12月

また、近年西表島では、「エコツーリズム」や「エコツアー」と呼ばれる、自然体験型観光が
増加傾向にありますが、ヒナイサーラなどの特定地域への集中により、
安全面や踏み荒らしなどの環境破壊が懸念されています。
一方ではシーカヤックツアーによる、キャンプにより、海亀の産卵妨害や、環境面ではない、
安全対策にも問題が指摘されています。

小型船舶安全規則改正のページ


7、環境大臣の不在
小泉政権以来、環境や外交に疎く、実質的に環境大臣不在の状況が続いています。
京都議定書に関しても全く見通しが立たない状況にあり、議長国として、情けない限りです。

  ウミガメの悲劇
緊急避難的に移動した卵
上部は指定以前に、冠水により死亡した卵
下方は緊急避難的に掘り出され移動する卵
高波で冠水した場所の海側に、更に深く産まれていた。


2006年7月に環境省は、ウミガメ類を国立公園特別地域で、指定動物に指定した。
その際、パブリックコメントで、
以下の意見を述べたが、無視され、保護活動である
ウミガメの卵の流失防止対策の移動が、特別地域でできなくなった。

☆☆私のパブリックコメント☆☆
西表国立公園特別地域の海亀類の指定動物指定に関する意見

西表近海の海亀類は減少傾向にあり特別地域のみの捕獲禁止では殆ど効果がなく、返って、
地元住民の保護や調査に対して、沖縄県と環境省に、許可申請が必要となり、保護や、
調査に対して、逆行することになり、現行の沖縄県による、採捕許可のみで、十分と考えます。
また、現場には、取締りのためのレインジャーの配置もなく、特別地域の海亀産卵地への
自動車乗り入れに対して、何の取締り、指導も行われていない状態で、
ただ、海亀類を指定動物にしても、全く意味がありません。
海亀類に関しては、全国的な捕獲禁止などの広域的な保護政策が必要であり、
法的な規制では、実質治外法権に近い西表では何の保護政策にも成りません。
よって、海亀類の指定動物指定は見送るべきだと考えます。
☆☆☆


★★★環境省の回答★★★
環境省の対応の考え方
西表国立公園では、特別地域内に重要な産卵地があり、指定動物として指定し、
モニタリングなどを実施し、保護の強化を図っていくことは、
ウミガメの保護にとって効果があるものと考えます。
また、自然公園法上の手続きは必要になりますが、
学術研究や自然環境保全のための捕獲については許可の対象となります。
極力、保護活動や調査に支障のないよう自然保護管事務所において事前に、
ご相談をお受けし、年度当初に年度内の行為を一括して、申請して頂くなど、
迅速に対応していきますので、御理解頂けますようお願い致します。
現地での監視体制の強化については、西表国立公園では、
今後、職員(レンジャー、アクティブレンジャー)の他、
グリーンワーカー事業による監視などを強化していく予定です。
自動車乗り入れについても、実態を把握し、必要な対策について検討していきます。
今回は西表を含む3公園での指定となりますが、
全国的に見ても重要な産卵地での保護を優先して実施しようとするものです。

★★

自然保護管事務所では、保護活動に対して許可は出せないとして、学術調査、
研究と並行して、卵の流失防止の保護活動をするようにとの立場を譲らず、
パワーハラスメントになっています。
保護活動だけで手一杯で、慣れない稚拙な学術調査をやっても意味がないと思います。
聞くところによると、今年は国際海亀年とのことで、笑ってしまいます。
環境省は保護をするつもりが、保護の妨害をしています。
環境破壊省と改名すべきです!!

☆補足説明☆
国立公園特別地域は、本来は保護地区として、できる限り自然状態で、管理しようというのが、
国の基本的な方針です。
しかし、海岸線の浸食の激しさや、減少しているウミガメの保護には、
特別地域といえども保護する必要がある程、普通地域での産卵が、減少しています。
殆どが、人為的な産卵妨害によるもので、灯火や騒音、車両乗り入れが原因と考えられています。
保護地区を設けることで、日本中を開発するお墨付きを得るための、
保護地区なのですから、許可の下りにくいのは当たり前なのです。
しかし、浦内川や仲間川も、特別地域で、観光船による環境破壊は
ほったらかしです!!
海岸浸食は上記の、赤土汚染による珊瑚礁の死滅や、地球温暖化のせいで、海水温上昇による
珊瑚の白化(死滅)、海水面の上昇、台風の多発や大型化による複合的な環境破壊であると考えられ、
全てが、人為的な影響によるものだと考えられます。

追記
8月20日現在
保護目的での許可を出す方向で、石垣事務所の方で対応中との事で、現地視察も行いました。
どんな条件で、許可が下りるのか?しばらく、見守りたいと思います。
幸い未だ、台風の接近はありませんが、その後、2ヶ所の上陸跡がありました。

追記2
10月9日現在環境省からの許可は下りていません。
結局9月の台風13号により、移植した卵も被害に遭い10月現在、南海岸での海亀の孵化は
確認されていません。
台風13号が、最強クラスの強さだったために、移植での保護でも限界があります。
13号の後特別地域では2ヶ所の上陸跡があり、1ヶ所は産卵の可能性が高い状態です。
今回の台風被害の大きさは、地球温暖化の影響と考えられます。
このままでは、何れ西表での海亀の産卵、孵化は激減し、西表生まれの海亀が絶滅する日も
そう遠くはないかも知れません。

最終報告
やっと、保護活動の許可がおりました。
2007年5月29日付け


8、地球温暖化

 
2007年珊瑚の白化
前項目での、ウミガメ類の例に止まらず、地球温暖化は着実に進行している事が実感できます。
京都議定書に基づくCO2削減は殆ど実績を上げていません。
景気対策のために、むしろ産業振興をして排出量を、増やす方向にしか動いていません。
2050年までに炭酸ガス排出量を半減する事が、ほぼ合意されましたが、
2050年までに気温は2度上昇することが予想され、海水面も数十センチの上昇が、予想されています。
しかし、半減しても温暖化がストップしたり、上昇が下降するわけではありません。
排出ガス取引や、森林吸収分を含めれば、実質的な削減がどれほどになるか不明で、予想を上まる事は確実です。
現実には沖縄周辺では既に海水温が1度上昇していて、異常潮位も観測されています。
恐らく、このまま行けば、予想を上回る上昇が、確実で、一刻も早い削減が必要な状況です。
「プリウス」を買えば、減税になりますが、走行距離が少ない場合は、古い車を大事に乗る方が、
排出量を増やす事にはなりません。古い車に高額の税金をかける事は、単純にはエコではないはずです。
それよりも、税金の無駄遣を減らす事が、はるかに排出量を抑える事になると思います。
無駄な公共事業、特別会計の放置、予算消化だけの環境対策。選挙対策と思える予算等。

9、地球温暖化防止への指針

地球温暖化防止の推進にはいくつかの大きなハードルがあると考えます。
エネルギーの無駄遣いや、代替えエネルギー、生活習慣、文化の見直しがあります。
潜在的には、格差問題や人権問題、宗教、伝統文化が考えられます。
具体的に最も確実に成果が期待できるのは、軍縮です。
最も難し課題が、格差社会から起こる贅沢。富裕層の協力が、最も困難な課題といえます。
それは、自由主義経済や個人の基本的人権に関わることだからです。
しかし、我々人類は自然の恩恵無くしては生存が、危ぶまれる状況にある以上、
温暖化防止を優先する必要があると考えます。
ただ、秩序正しく納得のいく方法で実行する事が必要で、非常に困難な問題です。
例えば、オリンピックでは、多額の予算と共に大量の炭酸ガスが排出されます。
オリンピックは人類の存続に関わる事では無い以上、縮小や廃止を考えるべきです。
同じように、プロスポーツも縮小すべきです。
そして、石炭発電は、速やかに廃止すべきです。
古代の植物がせっせと固定化した炭酸ガスを元に戻すほど愚かな事はありません。
代替えエネルギーとして、原発を推進しようとしていますが、安全管理や事故の事を考えると、
問題の先送りや、重大な核汚染を招く可能性があり、中止すべきです。
地球上に、わざわざ有害核物質を増やし、気温の上昇(熱源として)も促進します。
自動車社会から二輪化、自家用車から乗り合いへと、時代に逆行することも必要でしょう。
もう一度、みんなが低エネルギー消費を真剣に考えるべきです。
マイバックなどのみみっちいエコではなく!!


2011年3月11日東日本大地震により原発の安全神話が完全に崩壊しました。
津波の想定高が6mではどこに科学的な根拠があったのか?考えられないことです。
この国は金儲けをたくらむ起業家と政官学の癒着で歴史的なダメージを受けることになりました。
この事故で、原発の発電単価が、決して安くないことも明るみに出てきました。
核兵器も原発も地球上に放射性物質を増やすだけの愚かな行為でしかありません。
未来の子供達に放射能汚染と経済負担を遺す人類の最も愚かな行為の一つです。
一刻も早く原発の廃止をすべきです。
原発は自爆的核武装でしかありません。
2011.5.20.追記


 2012年7月4日 日本野鳥の会が見解を発表


10.環境行政のあるべき姿
原発対応でも分かるように、環境行政を第三者機関に独立させる必要があります。
勿論、環境アセスも同様にそうしない限り、「アリバイ作り」的な環境行政になりがちです。
予算も、独立した環境税にし保護動物による被害の補償、増えすぎた野生生物の矯正など、
しっかり取り組んでいく必要があります。
新薬や遺伝子組み換えに対してももっと慎重に対応すべきです。
産業振興優先でなく。
結果的に3権分立から4権分立にならざるを得ません。
3権分立さえ不十分なのにとお考えの貴方、そう3権分立からやり直す必要があると思いませんか?
環境問題に人権問題や平和が不可欠なのはそんな経緯からでもあります。
環境アセスも第3者機関でじっくりと(5年以上)かけてやるべきです。
そうすれば、自然の大切さがより明確になります。
問題を先送りするのではなく開発を先送りにすべきなのです。
やがて来る人類絶滅を先延ばしするためにも。
2012年9月1日追記

11.世界自然遺産という環境負荷
2016年12月9日意見書を提出しました。
急ぎ作成したため十分なものではありませんが。


意見書
南西諸島世界自然遺産に関して

環境省
 那覇野生生物事務所
 石垣事務所
 西表野生生物保護事務所
沖縄県
 自然保護課
竹富町
 自然環境課
 商工観光課
マスコミ各社 御中
2016年12月9日
衣斐 継一

12月2日世界自然遺産候補地科学委員会琉球ワーキンググループ会議の公開があり
傍聴しました。3月12,13日西表島で「知ろう学ぼう世界自然遺産」と題した講演会の
際には地域住民の意見も聞きながら進めて行くとのことでしたが、地域住民の意見を
聞く機会もなく来春2月には提出の予定とのことでした。
行動計画がようやく示され、議論が始まるのかと思ったら、議論することもなく住民不在で、
具体性、実効性のない「絵に描いた餅」の行動計画に呆れるばかりです。
また、世界遺産地域の、やんばる地区での国立公園の規模が狭すぎるとの環境団体からの
指摘があり、北部演習場の返還を待ち地域拡大を図り、その間に十分な検討と実効のある
計画を立てるべきだと考えます。竹富町の自然環境保護条例の案さえも示されていない状況です。
本来、環境省が総合的な判断をして、実現可能な行動計画を立てるべき立場にあると考えますが、
申請ありきの泥縄方式で、これでは自然環境は守れないはずですが。

現在、西表島では世界自然遺産に向けて多くの課題があり行動計画にも多くが記載されていますが、
改めて上げてみます。
1.イリオモテヤマネコの保護
2.カンムリワシの保護と生息数の把握
3.農地からの赤土流出
4.仲間川保全利用協定地域におけるマングローブの枯死
5.シロアゴガエルなどの外来生物
6.ウブ、サザレ浜のリュウキュウイノシシの海亀卵の食害
7.国立公園特別地区での指定動植物の見直し追加
8.エコツアーの環境負荷の軽減
9.浦内川取水
10.地球温暖化

1.イリオモテヤマネコの保護
日本野鳥の会西表支部でも生物多様性条約「COP10」の際、現行の方法や法体系、
予算処置では効果のある保護が難しく、絶滅に至り税金の無駄遣いになることを指摘しましたが、
本年、事故が7件に達し根本的な対策の見直しが必須の状況です。
イリオモテヤマネコの交通事故対策も地下道や住民への呼びかけ程度で効果が出ていません。
県道の危険地域を高架にする、ネットでトンネル状にする。でこぼこ道路でスピードが
出せないようにする、全ての車に感知器を貸与しヤマネコを感知し交通事故を防ぐなどの
対策が考えられますが、法的制約と予算難で実行できない状況にあります。
単純に速度取り締まりさえできない状況にあります。
本来、機能すべき「イリオモテヤマネコ保護増殖検討会」が機能していません。メンバーの
見直しや増員、公開討論を強く要望します。私も19年間保護増殖事業の自動撮影の
業務をしていましたが、ここ10年位食痕や足跡などの痕跡が減少しています。
世界自然遺産登録を目指すのであれば当然ヤマネコの保護を軌道に乗せ安定的な
個体数300頭を確保すべきだと考えます。これまでの交通事故対策に重点を置いた
保護策ではなく、餌動物を増やし、餌取りに道路に現れないようにすべきだと考えます。
例えば、農地を無農薬化し餌動物を増やし、減収分の保証をする。種の保護法に基づく
保護区設定や行政特区さらに特別立法も考えるべきです。縦割り行政も解消すべきです。
そして、環境省の自然保護官(臨時職を除く)も1名から3名以上に増員し、24時間態勢が
とれるようにし、業務の引き継ぎをスムーズにすべきです。近年の短期での職員の交代は
西表の保全に逆行するものです。経験のある獣医師の配置も必要でしょう。行動計画でも
西表島での中核施設の必要性が上げられいますが、下記のカンムリワシ対策をも含め
遺産登録前に対策を完成させるべきです。

2.カンムリワシの保護と生息数の把握
環境省ではカンムリワシの生息数の調査はルートセンサスを中心に行われていますが、
天候の影響が大きく総数を掴めない状況にあります。一部定点観察が始まり
一定の成果が出ています。そこで、更に調査地点を増やし行動調査などの生態調査を
続ける必要があると考えます。
また、昨年の「八重山地区カンムリワシ保護対策連絡会議」(略称)において
「沖縄こどもの国」より野生復帰できないカンムリワシの終生飼育が限界にきているとの
報告がありました。その際にも、八重山で飼育すべきではないかと意見を出しましたが、改めて、
西表島へのカンムリワシの帰還を強く要望します。
もともと、カンムリワシは八重山固有亜種の、特別天然記念物で、島外に出すべきではないと
考えます。西表野生生物保護センターの施設拡張や新設、長期従事者の設置を含め検討を
すべきだと考えます。

3.農地からの赤土流出防止
現在、最も赤土汚染の酷い地域は大原、大富のサトウキビ栽培地域からで、
国立公園特別地域であり、沖縄県の仲間川利用保全協定も実施されている地域にも関わらず、
環境基準を遙かに超える濁度になります。サトウキビが台風対策や栽培の容易さから他に
代わる作物がないのもありますが、行政努力により転作を考えるべきです。補助金により
赤土流出をまねき地球温暖化も促進している状態です。パインアップル栽培地域では
マルチ栽培により赤土流出を軽減できますのでマルチフィルムの譲渡により軽減できます。
西田川の取水も国立公園特別地域で、世界遺産緩衝地帯であり、生物多様性条約の趣旨から考え、
農業地域からの取水や赤土流出防止対策の沈殿池と併用した、貯水池を多数設置し、
野生生物の餌場となるように近自然環境の貯水池を設置すべきだと考えます。

4.仲間川保全利用協定地域におけるマングローブの枯死
10年程前から仲間川中下流域でのマングローブ林の枯死が始まっています。原因は
複合的なものと推測できますが、入域観光船の多さから、原因の1つであることは推測できます。
原因の追及と共に、減船や省力化をすべきだと考えます。

5.シロアゴガエルなどの外来生物
現在根絶に向けて塩素剤やクエン酸の散布を行っていますが、塩素剤は環境への影響が
大きく水系の生態系を破壊してしまいます。シロアゴガエル侵入で最も影響を受けることが
推測できるヤエヤマアオガエルの生存を危うくし返って移入種の侵入空間を提供する
ことになりかねません。また、世界遺産では固有種の保護が課題なのに固有種の
アオガエルを混獲したのでは、趣旨に反することになります。シロアゴガエルは
やんばる地域などの情報から大きな環境破壊には至らない可能性があり、このような
環境負荷の少ない動植物とは共生の方法を模索すべきです。多くのエネルギーを
使い駆除をすれば、結果的に温暖化の原因になりかねません。産卵誘導目的の
水溜(100リットル前後)を配置し卵塊や成体を駆除するような緩やかな駆除に
切り替えるべきでしょう。

6.ウブ、サザレ浜のリュウキュウイノシシの海亀卵の食害
今回の国立公園拡大で、ウミガメの産卵する浜の多くが、特別地域に編入されましたが、
2006年のウミガメ類の指定動物指定にも反対しましたが、保護活動に支障を来す
ことはあっても、保護には至っていません。なぜなら、ウブ、サザレ浜では浜の浸食と
リュウキュウイノシシの食害が酷く2015年は壊滅状態でした。このまま放置すれば、
この浜を母浜とするアオウミガメは絶滅の危機に至ることは明白です。生物多様性条約の
遺伝子多様性の維持ができなくなります。以前は被害が無く安定した産卵場だった
地域ですから、駆除すべきだと考えます。なお、ウブ浜は海岸浸食が激しく数年で、
産卵ができなくなりそうです。

7.国立公園特別地域での指定動植物の見直しと追加
石垣西表国立公園特別地域での指定植物の中でテンノウメ、モダマ、アマミセイキカは
解除すべきで、追加として、マメ科(コウシュンモダマ、シロバナミヤコグサ、タシロマメ、ヤエヤマネムノキ)、
イワタバコ科(ツノギリソウ、タマザキヤマビワソウ、ミズビワソウ)サトイモ科(サキシマハブカズラ)
タコノキ科(ヒメツルアダン)、クロボウモドキ(バンレイシ科)他が考えられます。
指定動物では、保護する姿勢のない(前項6.参照)ウミガメ類(アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ)を
外すべきでしょう。そして、陸生の両生類、は虫類は全て、ほ乳類ではヤエヤマオオコウモリ、
固有種の昆虫類も加えるべきでしょう。

8.エコツアーの環境負荷の軽減
行政は「エコツーリズム」推進としてエコツアーを推進してきましたが、入域規制、
環境対策(自然への負荷対策)を怠ってきました。そのため西表島では環境保全型の
エコツアーは実現していません。世界自然遺産申請となると、その点は解決を要する
事項になってくると考えます。ヒナイサーラ地区の入域規制は西表島カヌー組合によって
1業者当たり14名(2ツアー)を上限としたもので、37業者では最大518名ガイド込み594名となります。
現実的な入域規制を行うためには何らかの公的な事務手続きが必要になり、
公的な支援が必要になります。他の地域では業者間の連携も取れておらず、仲介が必要になってきます。

9.浦内川取水
現在、環境省より許可を得て浦内取水の施設建設は終了していますが、渇水期に取水すれば、
自然環境への負荷(影響)は大きいものと考えられます。運用によって増水時に予防的に
取水する方が環境負荷は小さいと考えられますが、貯水施設を充実し、環境保全を図ることを
考えれば、取水自体が不要です。
なぜ、環境省が干ばつ時に間に合わない状況で、許可を出したか疑問です。
また、浦内川流域が、世界遺産推薦地ではなく緩衝地帯になっているか大いに疑問です。

10.地球温暖化
12月2日の議論の中でも「地球温暖化」対策をとの意見もありましたが、地域特有のものでないとの
ことで、切り捨てられましたが、殆どの事柄で、環境破壊の元凶にあり、特に西表島では我が国で
最大の温暖化と思われる被害や環境破壊があります。台風被害の増大による森林生態系の
破壊や乾燥化、植生の変化が起こり、海水温の上昇による珊瑚礁白化や海水面上昇による
海岸浸食があり、西表の環境を守るためには避けて通れない問題です。それを行動計画から
外すことは、環境破壊を黙認し保全や維持する気持ちが全くないことを意味していると
私は考えます。沖縄にできる温暖化防止として、開発の抑制(開発防止条例制定)や
過度の観光振興に至らないルール作りをすべきだと考えます。

西表島行動計画について
基本的に大学生のコピペのレポート程度の実効性しかなく、予算確保の保証もない、
机上の空論的なものだといえます。特にイリオモテヤマネコ対策は根本的に見直す必要があります。
山羊の野生化や県道の美化(草刈)が記載されていません。また、既に原始的な
自然は有していないと思います。そして、ボトムアップ型世界遺産管理体制確保と有りますが、
「西表部会」の構成機関には観光業や石垣市拠点の団体が多くボトムアップの構図には
なっていません。3月の講演会の参加者から疑問が示されましたが、改善されず
公開もされないまま、トップダウンで今回の包括管理計画が策定されています。
民間の環境団体や一般住民の参加する形での計画策定をすべきだと考えます。
さらに、生物多様性条約や特定外来生物対策を考慮すれば、沖縄県全域を緩衝地帯と
位置付けるべきだと考えます。

以上の理由から、早急な提出は中止し住民参加型の実効ある行動計画を策定すべきだと考えます。
2017.2.1.追記


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